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3.気管支喘息
長谷川 好 規 |
気管支喘息の患者は,年齢,症状,その重症度において,極めて多様性に富んでいる。さらには患者個人においても,症状が経時的に変化する。したがって,気管支喘息と診断するためには,1)発作性もしくは反復性の気道閉塞症状(呼吸困難,喘鳴,胸苦しさ,咳など)が存在すること,2)その気道閉塞は部分的であってもよいが,可逆性を有していること,3)他の心肺疾患など鑑別可能な疾患を除外できることの3点が必要である。これらは,医療面接による病歴の聴取,患者の身体所見,ならびに臨床検査所見の結果から総合的に判断される(図1)。
■外来診療における検査
A.確定診断に要する検査
気管支喘息の診療は,外来が中心となるが,医療面接と診察により得られる身体所見から,呼吸状態の把握と他疾患との鑑別が大切である。表1に外来診療に必要な基本検査を示す。動脈血ガス分析による呼吸状態の把握や肺機能検査による一秒量(FEV1.0),一秒率 (FEV1.0/FVC)やピークフロー値(PEF)の測定は,気道閉塞の程度と重症度を判定する上で必要な検査である。表2に,気管支喘息の診断に必要な検査を示したが,アレルギー状態の評価として血清総IgEの測定(RIST)や吸入抗原に対する特異的IgEの測定(RAST)は専門施設以外でも可能な検査である。これらは,抗原暴露を避ける教育を計画する上で有用である。さらに,気管支拡張剤の吸入前後における肺機能検査(ピークフロー値の測定を含む)は,気道の可逆性を知ることができ治療的診断として一般臨床外来で可能である。表1の(2)に全身状態の評価と他疾患との鑑別に必要な検査を示した。鑑別すべき代表的疾患を表3に示したが,鑑別診断のための検査については鑑別すべき疾患に応じて追加することが必要である。
図1 喘息が疑われた入院患者の検査のフローチャート
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(1)呼吸状態の把握と重症度判定に必要な検査 1)動脈血ガス分析(もしくはパルスオキシメーターによる酸素飽和度の測定) 2)肺機能検査(FEV1.0/FVC or PEF) (2)全身状態の評価と鑑別診断に必要な検査 1)胸部X線写真(正面,側面) 2)末梢血液検査:RBC,Hb,Ht,赤血球恒数, WBC,WBC分画,血小板 3)血液生化学:血清総蛋白,A/G比,総コレステロール,中性脂肪,AST, ALT,LD,ALP,gGT,UN,クレアチニン,尿酸,Na,K,Cl 4)CRP 5)尿検査:蛋白,糖,潜血,沈渣 6)喀痰検査:細菌塗抹・培養,細胞分画(好酸球の有無など) |
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(1)気道可逆性検査:気管支拡張薬(b2刺激薬)吸入前後の肺機能検査(b2刺激薬に反応が乏しい場合には,吸入ステロイド薬もしくは経口ステロイド薬を2〜3週間使用前後での肺機能検査) (2)気道過敏性試験:ヒスタミン,アセチルコリン,もしくはメサコリン吸入負荷試験 (3)アレルギー状態の評価:血清総IgEの測定(RIST),吸入抗原に対する特異的IgEの測定(RASTもしくは即時型皮膚反応) |
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・肺気腫 ・慢性気管支炎 ・心不全 ・肺血栓塞栓症 ・喉頭や声帯の機能不全 |
・腫瘍や異物による気道狭窄 ・PIE症候群 ・薬剤による2次性の咳(ACE阻害剤) ・胃食道逆流 |
B.専門医にコンサルテーションするポイント
表4に,呼吸器・アレルギー専門医へのコンサルテーションが望ましい場合を示した。表2に示した気管支喘息の診断に必要な検査の中で,気道過敏性試験やアレルゲンテスト(皮膚反応試験や誘発試験)は,重症発作の誘発や全身性反応に注意し,それに対応できる設備を有する専門施設で実施されることが望ましい。
C.入院適応のポイント
入院適応は,喘息症状の重症度と持続期間,気道閉塞の重症度,重積発作の既往歴,治療内容,ならびに患者の社会的背景に基づき決定される。表5に喘息急性増悪重症度分類を示す。また,喘息急性増悪重症度分類に基づいた入院適応のポイントを表6に示した。
D.経過観察に必要な最小検査
気管支喘息の管理において重要な点は,喘息日記の記載とピークフローメーターによる気道閉塞のモニターである。気道閉塞の日々の変動をとらえ,治療内容の評価や急性増悪時の治療のタイミングを計る上で必要である。一方,症状が安定している患者の経過観察の検査については,その内容と頻度に関する研究や明確な指針はない。治療薬(キサンチン製剤や免疫抑制剤)によっては薬剤の血中濃度測定によるモニターが必要である。
気管支喘息の症状は,さまざまな因子により増悪するため,症状の増悪時に呼吸状態の把握と重症度判定に必要な検査と,症状増悪の原因検索のための検査(表1)が適時実施されることが必要である。
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(1)過去に生命を脅かす発作(near-death発作)を経験している患者 (2)救急外来受診や入院を繰り返す患者 (3)3〜6ヵ月の治療にもかかわらず症状がコントロールできない場合 (4)症状が典型的でなく,他疾患との鑑別が必要な場合 (5)合併症を伴う場合(喘息以外の慢性呼吸器疾患,副鼻腔炎,慢性鼻炎,鼻ポリープ,胃食道逆流など) (6)侵襲的診断検査(皮膚反応試験や誘発試験を含むアレルゲンテスト,気管支鏡,詳細な肺機能測定) (7)自己管理のための患者教育が必要な場合 (8)経口ステロイド薬を常時必要とする重症患者 (9)職業喘息,アスピリン喘息,食物アレルギーなどの特殊な病態を有する場合 |
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息切れ・呼吸困難 |
呼吸数/分 |
脈拍数/分 |
肺機能 |
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軽 度 |
■歩行時 ■苦しいが横になれる |
■増加 |
■<100 |
■PEF(%予測値 or 自己最良値):>80% ■PaO2 :正常 ■PaCO2:<42mmHg ■SaO2%:>95% |
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中 等 度 |
■会話時 ■苦しくて横になれない |
■増加 |
■100〜120 |
■PEF :50〜80% ■PaO2 :>60mmHg ■PaCO2:<42mmHg ■SaO2%:91〜95% |
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高 度 |
■安静時 ■苦しくて動けない |
■>30 |
■>120 |
■PEF :<50% ■PaO2 :≦60mmHg ■PaCO2:≧42mmHg ■SaO2%:<91% |
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重篤状態 |
■チアノーゼ ■意識障害 ■呼吸停止 |
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■PEF :測定不能 |
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(1)喘息急性増悪重症度分類において 1)重篤状態:直ちに入院 2)高度症状:1〜2時間の初期治療に反応が悪くピークフロー値や酸素飽和度の改善が乏しい場合 3)中等度症状:2〜3時間の持続的治療において自覚症状,ピークフロー値や酸素飽和度の改善がない場合 (2)過去に生命を脅かす発作(near-death発作)を経験している患者 (3)過去に救急外来受診や入院をしばしば必要とした患者 (4)呼吸器感染症や気胸・縦隔気腫など合併症を有する患者 (5)外来受診までに長期(数日〜1週間)にわたり症状が持続していた患者 (6)精神疾患の存在や意志の疎通が困難である場合 (7)喘息症状の再悪化に際し,速やかに外来受診が困難である場合 |
■入院診療における検査
A.確定診断に要する検査
入院適応のポイントを表6に示したが,気管支喘息の診断がなされている患者がさまざまな原因で急性増悪をきたし入院する場合と,気管支喘息の診断がなされていない患者が呼吸不全を主訴として入院する場合がある。いずれの場合においても医療面接と診察により得られる身体所見から,全身状態の把握と他疾患との鑑別が大切となる。入院後に必要な一般検査は,表1に示した外来診療に必要な基本検査と同じであるが,呼吸状態が悪いために酸素投与に伴う一日に複数回の動脈血ガス分析が必要となる。高炭酸ガス血症を伴わない場合はパルスオキシメーターによる酸素飽和度のモニターで代用することも可能である。また,肺機能検査が実施できない重症例では,ピークフローメーターによるベッドサイドでのピークフロー値の測定が必要である。一方,気管支喘息の診断がなされていない患者においては他疾患との鑑別診断のために,また,すでに気管支喘息の診断がなされている患者においてはそれに加えて急性増悪の原因検索のために一般採血・検尿検査,胸部X線撮影,ならびに喀痰検査が必要である。
気管支喘息の診断がなされていない患者においては,表2に示した気管支喘息の診断に必要な検査を実施することが必要である。
喀痰,血液中や尿中に検出される炎症の生物マーカー(化学伝達物質など)の測定は,臨床研究で評価されているところであり,現時点で日常臨床における有用性は確立されていない。同様に気管支ファイバースコープ検査法は,臨床プロトコール研究などの例外的状況でのみ使用される。
呼吸状態の経過観察において,パルスオキシメーターによる酸素飽和度のモニターもしくは動脈血ガス分析が必要である。また,客観的でかつ簡便な肺機能の評価法としてのピークフローメーターによる1日複数回のピークフロー値の測定は,呼吸状態の経過を追跡する上でも,気管支喘息の補助的診断(日内変動や経時的変動の存在を知ることができる)の上でも入院期間を通じて必要である。治療薬(キサンチン製剤や免疫抑制剤)によっては薬剤の血中濃度測定によるモニターが必要である。また,ステロイド剤などの治療薬による副作用や感染症などの合併症に対する全身状態の定期的評価も必要である。
患者の呼吸状態が改善した時点における肺機能検査や動脈血ガス分析は,退院後の患者のフォローアップの上で必要である。症状が消失し,呼吸機能検査において気道閉塞を示さない患者では,ヒスタミン,アセチルコリン,もしくはメサコリンなどを用いた気道過敏性の測定は,気管支喘息の診断をよりはっきりさせる上で有用である。
病因と考えられる抗原の吸入誘発試験やアスピリン喘息などにおける負荷試験は,原因を解明するのに役立つが,主に安全性の面から一般的に用いることは推奨されておらず,専門施設で重症発作やアナフィラキシーショックに対応できる施設での実施が望ましい。
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(1)ピークフローメーターによる1日複数回のピークフロー値の測定 (2)パルスオキシメーターによる酸素飽和度のモニターもしくは動脈血ガス分析 (3)末梢血液検査・血液生化学・CRP・尿検査・胸部X線写真 (4)薬剤血中濃度(必要に応じて) |
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(1)肺機能検査 (2)動脈血ガス分析 (3)薬剤血中濃度(必要に応じて) |
■その他
上記の検査内容は,外来診療における検査ならびに一般病棟での気管支喘息患者管理に必要な検査について一般臨床医を対象に記述したものである。また,重症呼吸不全患者で集中治療室での治療を必要とするものについては想定されていない。
参考文献
1) 牧野荘平, 古庄巻史, 宮本昭正 : 喘息予防・管理ガイドライン 1998. 厚生省免疫・アレルギー研究班, 1998
2) International Consensus Report on Diagnosis and Treatment of Asthma. National Heart, Lung, and Blood Institute. National Institute of Health, HIH Publication, 1992(喘息と診断のための国際委員会報告−日本語版−, Life Science Publishing, 1992)
3) Global Initiative for Asthma. Global Strategy for Asthma Management and Prevention NHLBI/WHO Workshop Report. National Institute of Health, National Heart, Lung, and Blood Institute, Publication Number 95-3659, 1995
3) Guidelines for the Diagnosis and Management of Asthma. National Heart, Lung, and Blood Institute. National Institute of Health, HIH Publication, 1997
(平成13年3月脱稿)