10.不 整 脈

川 口 秀 明  

 

不整脈の種類

 不整脈の種類は幾つかの分類が可能だが,ここでは以下の様に分類し診断法を述べる。

A徐脈性不整脈

 1)洞不全症候群

 2)房室ブロック

B頻脈性不整脈

 1)心室性不整脈

  a)心室期外収縮

  b)非持続型心室頻拍

  c)持続型心室頻拍

  d)心室細動

 2)上室性不整脈

  a)心房性期外収縮および頻拍

  b)発作性上室性頻拍

  c)WPW症候群

  d)心房細動・粗動

 

外来または入院して行う検査

A外来で行う検査

 12誘導心電図およびHolter心電図

 胸部X線写真,心エコー

B入院して行う検査

 外来診断時に重症(致死性危険度が高いもの)と判断された不整脈は入院させ,上記検査に加え,His束心電図等の電気生理学的な検査を行う。さらに必要に応じて,運動負荷を行い不整脈の誘発を試みる。原因疾患の解明のために心臓カテーテル検査,冠動脈造影が必要になることもある。

 

各不整脈の診断法(1)

A洞不全症候群(sick sinus syndromeSSS)

 洞結節の機能障害によりめまい,立ちくらみ,失神などの症状を伴い,時には心停止により生命の危険に直面することがある。

 1診断法(2)

 外来にて,ホルター心電図等でSSSと疑われた場合,入院させ電気生理学的検査によりその重症度を評価し,早急にペースメーカー挿入を含む治療法の決定が必要である。

 

1 不整脈の種類と診断法

不整脈

臨床的意義

診断法

 徐脈性不整脈

 洞不全症候群

 ときに致死的

 12誘導心電図ホルター

 電気生理検査

 房室ブロック

 ときに致死的

 12誘導心電図ホルター

 電気生理検査

 頻脈性不整脈

 期外収縮

 ほとんど良性

 12誘導心電図ホルター

 非持続性VT

 ほとんど良性

 突然死の予知**

 持続性VTの予知#

 12誘導心電図ホルター

 電気生理検査

 持続性VT

 高率に致死的

 12誘導心電図ホルター

 電気生理検査

 心室細動

 致死的

 電気生理検査

 

 

(文献2より改編引用)

 

2 洞不全症候群の診断法

  1)頸動脈洞刺激  

  SSSは頸動脈洞過敏状態である例が多く,心電図モニター下で頸動脈洞マッサージを左右10秒ずつ行うことで3

  秒以上の心拍停止がみられる。

  2)ホルター心電図  

  長時間の心電図記録が可能になり,標準12誘導心電図では見落とされる不整脈の検出ができるようになった。

  特に臨床症状との関連や最大心停止時間の測定を捉えることはSSSの診断に有用である。

  3)運動負荷  

  交感神経の興奮に対する洞結節の反応をみる方法で,トレッドミル試験などを行い,心拍数の増加が非常に少な

  い場合はSSSが疑われる。

  4)薬物負荷  

  洞結節は自律神経の影響を強く受けるため,薬物によりその影響を取り除いた上で洞結節の機能を評価するもの

  である。以下の三つがよく使用される。

 (1)硫酸アトロピン投与法

    迷走神経の影響を遮断する目的で使われ,硫酸アトロピン0.51mgを数分かけて静注し,心拍数の変化をみ

    る。SSSの場合は,心拍数が投与前の25%増以下,あるいは90/分以下である。

 (2)イソプロテレノール投与法

    イソプロテレノール0.53mg/minを投与し,正常ならば25%以上の心拍数増加が認められるが,SSSではそ

    れ以下である。

 (3)薬理学的自律神経遮断法

    交感神経と迷走神経の両方を遮断し,洞結節の内因性機能をみる方法である。プロプラノロール2.0mg/kg

    10分で静注し,10分後に硫酸アトロピン0.04mg/kg2分で静注して得られた心拍数を固有心拍数(intrinsic

    heart rateIHR)とする。これを正常者のIHR予測値と比較して判定する。

  5)電気生理学的検査  

  電気生理学的検査の目的は洞結節自動能と洞房伝導能を評価することにある。前者には洞結節回復時間(sinus

  node recovery timeSNRT)の測定,後者には洞房伝導時間(sinoatrial conduction timeSACT)を測定する。

  また,薬理学的自律神経遮断法を組み合わせて評価することもある。

 (1)SNRT

    心房を一定頻度で一定時間刺激したときのペーシング終了時の最終P波から最初の洞性P波までの時間であり

    (overdrive suppression test)SSSでは著明な延長を示す。

 (2)SACT

    自動能により洞結節で起こった興奮が心房に到達するまでの時間であり,心房早期刺激法(Straus)と心房

    slow pacing(Narula)2種類がある。

 (3)薬理学的自律神経遮断法

    前記のイソプロテレノールと硫酸アトロピンを組み合わせて行う方法で,内因性洞結節機能を評価する。

(文献1より引用)

 

B房室ブロック

 1房室ブロックの分類

 房室ブロックは心電図所見により1度から3度に分類される。1度から3度になるに従い,重症度が高くなる(3)

 (a)1度房室ブロック:PR時間が0.21秒以上に延長しているが,Pの後にQRSが続いているものをいう。

 (b)2度房室ブロック:心房から心室への伝導が時々断たれた場合をいい,2種類に分類される。

  (1)Mobitz I型房室ブロック:PR時間が徐々に延長し,ついにはQRSが脱落するもので,Wenckebach型ブロックともいわれる。

  (2)Mobitz II型房室ブロック:先行するPR時間の変動無しに突然QRSが脱落するものである。

 その他,2度と3度の中間ともいえる高度房室ブロック(advanced A-V block)という用語がある。心房興奮の多くはブロックされるが,時に心室へ伝わるもので,一般的には21伝導より伝導比の悪いものをいう。

  (3)3度房室ブロック:心房から心室へ伝導が全く途絶えるもので,完全房室ブロックといわれる。心房と心室の興奮が無関係に生じており,心室はブロック部位以下から生じる補充調律により興奮する。

 2外来および入院における診断法

 ブロック部位を明らかにすることが重要である。なぜなら,房室結節のブロックは,機能的な要素が多くペースメーカーの植え込みが必要な例が少ない。ヒス・プルキンエ系のブロックは,ほとんどが器質的障害によるものであり,ペースメーカーの植え込みが必要である(3)

 外来時12誘導心電図およびHolter心電図にてMobits II型以上の房室ブロックを認めた場合早急に入院させ,電気生理学的検査を行い,障害部位を決定すべきである。

 4に示した所見が見られた場合は,房室結節のブロックが強く疑われ,症状が伴わない限り治療の必要はない。

 

3 房室ブロックの心電図分類とブロック部位

ブロック部位

房室ブロックの心電図分類

1

2

高度

3

 

I

II

 

 

   

 ±*

房室結節

     ++

     ++

     ++

ヒス・プルキ

 ンエ系

  **

     ++

     ++

     ++

(文献1より引用)

 −:認められない,±:まれ,+:少ない,++:普通

     にみられる。

  *:きわめてまれにジギタリス中毒や心房ペーシング

     時にみられる。

 **:左脚ブロックを伴う例では高率にヒス束以下の

     障害がみられる。

 

4 2度および3度房室ブロック例において房室結節内ブロックが疑われる所見

 @睡眠時にみられやすい。

 A高度なトレーニングを続けているスポーツ選手に

   みられる。

 BPP間隔の延長(副交感神経系の緊張を反映する)

   伴いブロックが出現。

 C11伝導時,PR時間が300ms以上でQRS幅は

   正常。

 D頸動脈洞圧迫でブロックが悪化。

 E運動やアトロピン静注により改善。

 Fジギタリス,b遮断薬,Ca拮抗薬,交感神経抑制薬

   投与中に出現。

(文献1より引用)

 注:ヒス・プルキンエ系のブロックは自律神経に影響されることは少ないが,副交感神経系の緊張によるPP間隔の延長に伴い伝導が改善したり,運動やアトロピン投与によりPPが短縮するとブロックが増強することがある。

 

C心室性不整脈

 1心室性期外収縮

 QRSが早期に出現しPを伴わず,幅が広く変形し,TQRSと反対の方向を向く。診断は外来の12誘導心電図で可能なものがほとんどであるが,総数や日内変動を知るためにHolter心電図が有用である(5)Lown 3度以上の場合,速やかに治療を行う。必要に応じて運動による増加,減少について検討する。

 

5 心室期外収縮の重症度分類(Lown)

grade

期外収縮の性質・特徴

0

  期外収縮なし

1

  散発性(1時間30個未満)

2

  多発性(1時間30個以上)

3

  多形性

4a

  2連発

4b

  3連発以上

5

  R on T

 

(文献2より引用)

 

 2非持続型心室頻拍

 心室性期外収縮が35連発以上持続し30秒以内に自然停止するもので,多くは10連発以内で出没を繰り返す。診断法は期外収縮と同じ方法を用いる。

 3持続型心室頻拍

 30秒以上持続するか,それ以内でも停止処置が不可欠な心室頻拍をいう。Torsades de PointesQRS波形が基線を中心に捻れるように変化するQRS多型性心室頻拍である。心室頻拍の症例ほとんどが,緊急外来の心電図記録で診断される。発作頻度は少なく,重症であることからHolter心電図のオーダーをすることなく,速やかに入院させ,電気生理学的検査を行い,機序,起源,および薬効判定を行う。

 4心室細動

 心室細動はQRS-ST-Tが判別できず,奇妙な不規則な揺れを示す。R on T型の心室性期外収縮,速い心室頻拍,多型性心室頻拍から移行することが多い。心室細動の原因として急性心筋梗塞,QT延長症候群や抗不整脈薬の副作用などがあり,単形性心室頻拍を経ることなく心室細動を発生する(一次性心室細動)。持続性心室頻拍から心室細動に移行する例も多く二次性心室細動という。原因不明の心室細動も報告されており,特発性心室細動と言われている。致死性の非常に高い不整脈であり,機械的な心収縮が消失した心停止状態にある。救急外来などで発見された場合,心肺蘇生を直ちに開始し,除細動を行う。除細動後原因疾患の解明を行う。

D上室性不整脈

 1心房性期外収縮および頻拍

 12誘導心電図によって診断可能なことが多いが,ホルター心電図も有用である。

 P波は洞性P波と異なる波形を示す。多彩なP波を認めることもある。

 2発作性上室性頻拍(PSVT)(6)

 心拍数は通常150220/分となる。心電図上narrow QRS tachycardiawide QRS tachycardiaに分けることができる。機序として,1)洞結節リエントリー,2)心房内リエントリー,3)房室結節リエントリー,4)不顕性WPWによる房室リエントリーを機序とする頻拍がある。

 診断は頻拍発作時の12誘導,モニターおよびホルター心電図によって行う。また,入院させて,電気生理学的検査で,頻拍を誘発させることが可能である。誘発頻拍心電図によって,頻拍の鑑別および頻拍の起源または回路の診断を行う。急性期には次の診断法が有益である。

 a.迷走神経刺激による診断

  i)頚動脈洞マッサージ,ii)眼球圧迫,iii)バルサルバ刺激,iv)冷水刺激,v)咽頭刺激(嘔吐動作)などを行う。

 (a)停止する頻拍

 上記1)3)および4)の機序による頻拍

 (b)停止しない頻拍

 上記2)の心房内リエントリーおよび心房粗動は停止しない。

 

6 心室頻拍の鑑別診断法

(Brugadaらが提唱した鑑別診断法の感度と特異度)(SVT:上室頻拍)(赤字部分:表上に記入されていたもの)

  前胸部誘導でRS型がない

はい………VT          いいえ

        感度 21%,特異度 100%

  前胸部誘導でRの始まりからSの谷までの

  最長の間隔が100msec以上

はい………VT          いいえ

        感度 66%,特異度 98%

  房室解離

はい………VT          いいえ

        感度 82%,特異度 98%

  V1-2V6の形態

はい………VT          いいえ

        感度 99%,特異度 97%

形態の診断基準

 右脚ブロック型

   V1誘導

      単相性R             VT

      QRあるいはRS      VT

      三相性              SVT

   V6誘導

      R/S1              VT

      QSあるいはQR      VT

      単相性R             VT

      三相性              SVT

 左脚ブロック型

   V1あるいはV2誘導

      R30msecSの谷までの間隔>60msec

      ノッチのあるSVT

   V6誘導

      QRあるいはQS       VT

      単相性R             SVT

(文献2より引用)

 

 3WPW症候群

 洞調律時心電図上PR間隔が短縮しデルタ波を示す。デルタ波の消失する間歇型もある。頻脈の既往例では,電気生理学的検査により副伝導路部位や数を診断する。

 4心房細動・粗動

 心房細動はP波を認めない。細かい不規則なふれを示す。心房粗動では鋸歯状の振れを認める。いずれも12誘導心電図で診断可能であるが,発作性のものはホルター心電図が有用である。

参考文献

 1) 内科治療ガイド(Medical Practice編集委員会編), 文光堂, 1998. p386436

 2) 循環器研修医ノート(責任編集 永井良三), 診断と治療社, 1997. p469518

(平成133月脱稿)